衣服も、すべて『食べられる』事に繋がる
EOMO store
世界での経験、衣と食の繋がり
デザイナーであり作り手でもある幸治さんは多摩美術大学で建築を学び、その後アントワープ王立芸術アカデミーでファッションを学んだ。洋子さんは高校よりロサンゼルスに渡り、アントワープ、パリでファッションデザイナーのベルンハルト・ウィルヘルムに師事後、バルセロナで革工芸を経験。ともに日本に帰国して、天然の革と木を使って自分たちの手で作る革製品のブランド「EATABLE」をスタートさせた。
それぞれが日本を離れて学び、暮らし、旅をして目にしたもの、感じたもの、経験したことがブランドの礎になっている。
ふたりがブランドを立ち上げたのは、日本へ帰国した2007年に、靴職人に出会ったことがきっかけだった。靴の製法を学び、ヌメ革と天然の素材を使って自分たちの手で子供用の靴を作り上げる工程は、まるでパンを作るようで、できあがった靴はオーブンから取り出した焼きたてのパンのようだった。チャップリンの映画でチャップリンが靴を食べるシーンを思い出したという。
衣服に天然の素材を使うことは食べることに繋がっていくという発想が、「衣」と「食」の関係性を軸に衣服を考えるブランド「Eatable of Many Orders」のきっかけとなった。
新居さんご夫婦は革小物・洋服のデザインを『Eatable=食べられる』というコンセプトがある。とてもユニークなコンセプトなのだが、素晴らしい考えだと気付かされる。衣類の原料は元々植物や動物から始まっている。人類の始まりに原住民が獣を纏い、植物を纏い、そこから変化を成し遂げてきている。
グローバルなモノづくり
コレクションの度にテーマを考え、まずはリサーチをする為にスクラップブックを作る事から始める。Cacao,Tea,Honeyなど、テーマは食べ物に纏わるものが多い。調べていく事で気付かされ、知る事が多く、自分たちも勉強しながら制作していくという。素材はどのように生まれ、どのように作られていくのか。
作り手として、形をデザインするだけでなく、知る必要がある。
熱海でお店をオープンし、職人との出会いも多く、自然との共存ができるようになった。懇意にしている各地の素材の仕入れ先や縫製工場とは、この人と働きたい、この人の生地を使いたいと思い、取引が始まったのだが良い素材や技術の価値を自分たちなりに見出すことで、それらを提供してくれる人との信頼関係も育まれていくと感じている。東京ではなくても世界に向いた視野を持って自分たちのやり方でモノづくりができている。
見失われてしまうかもしれない衣服の素材や技術、歴史を追求し続けたいという。
EATABLE/Eatable of Many Orders(エタブル/エタブルオブメニーオーダーズ)新居幸治・洋子
多摩美術大学で建築を学んだ後、アントワープ王立芸術アカデミーを卒業した新居幸治と、アントワープとパリでベルンハルト・ウィルヘルムに師事した後、バルセロナでの革工芸経験を経た新居洋子が2007年に始めたブランド。熱海にアトリエを併設した直営店を構える。<EATABLE>では製作の全工程を自身のアトリエで手がける革製品を、<Eatable of Many Orders>では毎シーズン独特の視点で掘り下げるテーマを反映した衣服を展開している。ブランド名にある「Eatable=食べられる」は、テーマのリサーチ、素材の理解、天然素材の使用、染織や革の鞣しなどの製法への執着を表すのと同時に、「すべては食べることにつながっている」という思考が根底にある。人が服を着る感覚を敏感にできる環境づくりを目指す。