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崩すという美しさ、そして未来の地球によりそう暮らし

PEACE CRAFT 代表 西村正行

地球の悲鳴

今回取材させて頂いたPEACE CRAFT代表 西村正行さんは、「地球の環境を真剣に考え、それに向き合いながら暮らしに寄り添う大工であり、アーティスト」

どんな活動をしているのかを知って頂く為に、まずは現在の地球環境について触れてみます。

近年、地球が悲鳴をあげている声が世界中で聞こえてくる。

日本で言えば災害の勢いが増し、今まで経験したことのない勢力のある台風や温暖化現象が起きている。

地球の人口増加と経済の活動により地球が限界に迫ってきている。

地球温暖化と言う言葉はよく耳にするが、具体的にどのような事なのかと認識している人は少ないのかもしれない。

18世紀の産業革命以降、石灰や石油などの化石燃料を燃やし沢山のエネルギーを得るようになった、その結果大気中の二酸化炭素が急上昇してきた。海水が上昇する事によって強力な台風が起きる、水不足、海面上昇、砂漠化などの異変が起き、食物にも影響してくる。

これは地球人口の急増によって、経済活動によるCO2の排出量が急増、それに共ない世界の平均気温が上昇気候にあり、2100年には最大4.8度も上昇すると予測されている。2100年の推定人口は約1100億人とされており、環境破壊は進み今よりもっと世界の気候変動で異常気象が起きるかもしれないと推測されている。

この問題は地球に住む私たちひとりひとりの意識、考え方、行動で防ぐことができる。

そう、私たち人間はそもそも地球が誕生してだいぶ経ってから誕生した生き物。

地球温暖化とは?

地球温暖化について3つの問題が掲げられる。

水の問題から自然への影響、そして暮らしへの被害として人間に関係してくる。

水の問題はかなり深刻だ。まず海水について。

海水が拡張し、過去100年で世界の平均海水面が16cm上昇したことがわかっており、南太平洋での島国では既に浸水が進んでおり、このままでは国土全体が海に沈んでしまう。乾燥した地域に住む人々や氷河の雪解け水を生活用水として頼っている人は世界の人口の6分の1を占める。氷河の雪解けによって氷河湖ができ、決壊することで洪水は起きる。

嵐、大雨が起きることによって洪水や浸水の水害は起こり、地滑り、干ばつ、水不足となり経済や資産にリスクが生じる。

そして暮らしの為の水がなくなる。

二つ目の問題は自然。

地球温暖化が進むにつれて、絶滅危機の野生生物は1750種類以上と言われている。

これは野生生物だけでなく、生態系にも影響しており植物にも変化が起き、植物に生存する生き物も絶滅していく。

乾燥化が進む地域では毎年のように森林火災が増え、野生生物の生息地が次第に広がり多くの炭素を蓄えた樹木が密になっている森林には大気中の大量の二酸化炭素を放出する。

海の生き物である珊瑚は水温の変化に弱く、海水上昇によりCO2が海洋に吸収され海水の酸性化が進み、植物プランクトン、動物プランクトンも滅亡していく。この星に生まれた自然の生き物すべては、何か一つでも欠けてはいけない。

地球はそうやって出来てきた。

最後に暮らしについて。

地球温暖化によって、農作物に被害を受ける。農作物と温暖化で変化した気候にあった生産方法を考えなくてはいけない。

食料の生産が下回ると熱帯的な地域には伝染病などが流行するなど、人体に影響してくる。

こうして全て巡り巡って、最後は人間に戻ってくる。

だからこそ、今私たちが目を向けて改善しなくてはいけない。

自分たちの撒いた種をなんとか阻止する役目がある。

PEACE CRAFTの誕生

西村さんは18歳で大工として弟子入りし、長年経験を積んできた。

元々設計士になることを目標にしてきたこともあり、不動産、設計事務所を経て独立を果たす。

設計、デザイナー、営業、大工技術までを習得し今では廃材を使ったアーティストとしても活躍。

西村さんが廃材に興味を持ったのは、建築会社に勤務していた頃に廃材として出る木古材を廃棄していたこと。

廃棄することを惜しむ気持ちがあったことがきっかけとなった。

その廃棄する古材を家に持ち帰り、DIYで小物のモノづくりを始め友人にプレゼントをしていた。

インスタグラムに投稿したらファンがつき始め、その反響がとても良く瞬く間に広がっていったという。

そして2013年にPEACE CRAFTは誕生することとなる。

西村さんは古き良きものを大切にし、それに寄り添った暮らし方を自身も大切にしている。

現在は葉山の古民家に住みながら、自宅のメンテナンスにも心がけ畑仕事も行なっている。

昨年、沖縄の古民家再生プロジェクトも手がけ、民泊を運営するなど様々な取り組みに目を向けている。

3Cycleの意味

 西村さん曰くかつて日本の建築は手間の掛かる作業をしていた。日本では建築の発展が進み、今は失われつつあるその技法や工程。現在の建築は20~25年でその価値は0になり、30~40年先の事までしか考えていないとも言われている。

そこが欧米とは全く違う考え方であり、欧米は古い程価値が上がる。それは、建築・家具・衣服・車など色々な事に対して言える。

例えばパリなどは街並みが揃っており新しい建築が出来ない。何百年も前の建築を大切に築き、代々受け継ぐ文化が当たり前。パリの中心部にはDIYのデパートメントもあり皆自分の好みにカスタムし、楽しみながら建築を大切にしてきている。古い家具も蚤の市などで見つけて、新しい家具との共存を生み出す。不便なものほど愛着が湧き、その昔の文化に短に触れ合う事も大切にしている。

西村さんはその考え方に近い感覚を持っている。「崩すと言う美しさ」を知ったと取材の中で話してくれた。

古材の中にある廃材に目を向けた。

東京やアメリカは築100年以上の建物を崩す時には手動のみと言う決まりがある。

そこから出る廃材はもちろん古材と呼ぶ。廃材を引き取って欲しい側、そして廃材を欲しい側がいる事でゴミも減り地球にも良いサイクルが生まれる。近年「UPcycle」と呼ばれる言葉が出てきたが、簡潔に言うと「素材をそのまま活かす」と言うこと。

リサイクルやリユースとは異なり、元々の形状や特徴などを活かしつつ古くなった不要なものを捨てずに新しいアイディアをプラスする事で別の物に生まれ変わる、サスティナブルな考え方のこと。

一方「Recylce」は、原料に戻すと言うこと。例えば皆が愛用するフリースはペットボトルを溶かして作り上げている。

Downcycle」は元の物より価値や質が下がること。いずれはゴミとなる継続できないもののこと。例えば、新聞から再生紙を作る。いらなくなった衣類から雑巾を作るなど。

Reuse」はビンや古着など形を変えずに利用するもの。

Creative Reuse」は商品化することだけでなく、廃材を利用したアート作品のこと。

つまりUPcycle>Recycle>Downcycleの順でアップグレードしたりダウングレードしたりする。

これを全てまとめて「Sustainableサスティナブル」と呼ぶ。

地球の環境を壊さずに、資源も使いすぎず、未来の世代にも美しい地球は平和で豊かに、ずっと生活し続ける事が出来るという意味。

簡潔に言えば、自然環境に配慮した暮らし方。

ネイティブアメリカンの言葉に「7代先まで考えよ。」と言ういわれもあったように、原住民は先を考えて生きてきた。

その言葉を知って、今の人間達には少なからずそんな先の事まで考えてはいないであろうと思った。

UP CYCLE JAPANの活動

 近年、色々な業態でサスティナブルに配慮するようになってきている。

車産業、雑誌媒体、ファッション業界でもよく目にする言葉だ。

特にファッション業界は力を入れており、無駄な資源は使わないように切り替えている企業も多い。

ファストファッションの流行に伴い、衣類の年間消費量が増え、一人当たりの廃棄量が増加している。

これは20年前に比べると2倍となり衣類を作る過程で生じる汚染水、温室効果ガス、そして衣服に毛や革を使うために動物を大量に処分する。

日本は海外に比べるとサスティナブルな意識はまだまだ浅く、短な取り組みとしてやっとタンブラーやエコバックが当たり前になってきた。

地球に住む一人一人が何かできることからでよい、例えば着なくなった衣類やバックを売って新しい服を買うでも良し、そのお金で美味しいものを食べに行く事も良し。宝石もリユースしても使うも良し。

少しでもこの問題に目を向けて、意識すると地球の未来は変わってくる。

西村さんはその活動に大きく取り組んでいる一人。

この春オープンした西村さんのお店「UP CYCLE JAPAN/PEACE CRAFT LABO」は神奈川県茅ヶ崎市にある。

元々は作業するラボとして使っていた場所の半分のスペースに、DIYをする為の木工用品や廃材を取り揃えたお店をオープンした。

茅ヶ崎と聞くと海を思い出すが、山側にあるラボは緑が生い茂った中にある。

古い建物は西村さんのセンスと匠の技で、PEACE CRAFTらしいラボだ。

鳥の囀りが鳴り響く中で、西村さんのアイディアは生まれる。

廃材の中から自分の好みで物を作りあげる、ここへ来ると決まった材料はない。古着と同じでどんな廃材に出会うかはその時次第。

ランプシェード、壁、家具、床と廃材が何かに変化する。決まりもなく、自由な発想で自分好みに作ることができる。

西村さんのラボは地球温暖化についてもっと一人一人の意識が目を向ける為にUP CYCLE JAPANを立ち上げた、そのアンテナショップも兼ねている。

UP CYCLE JAPANとは日本全国のあらゆるジャンルのUP CYCLEな活動している人のクルーを集めている。

例えば、雑魚(ザコ)と言うフレーズ聞いたことがあるだろうか?漁をした際に狙っていなかった魚が獲れたり、網に入っても市場に売ることの出来ない魚の事。その雑魚を生かした料理を提供する居酒屋。

コーヒー豆を焙煎する時、焙煎する量は決まっている。その中でその量からはみだしてしまう生豆が必ずある。

同じ種類なら集めて焙煎出来るけど、その都度量も豆も変わるので混ぜるわけにもいかない商品化出来ない豆たちをかき集め、オリジナルブレンドしたその名も『はみだしブレンド』と言うコーヒー豆。

日本はビニール傘王国。その消費量は年間6,500万本。東京都のある自治体では1日50~500本のビニール傘が路上に捨てられている。廃棄処分されるビニール傘をリメイクしたオシャレなバック屋さん。

知らなかったUP CYCLEな活動をしている人が沢山いる。西村さんはそのクルーを取りまとめる活動を始めた。

それがUP CYCLE JAPANだ。

自然との循環

 西村さんは更なる活動を始めようとしている。

ラボの隣に小川と畑を作る計画をしている。

実際に畑も葉山でやっていることもあり畑仕事には慣れている様子。ラボのトイレは肥料に変わる、つまり自然にカエルをコンセプトにしている“コンポストイレ”を使用。これが驚くほど臭いがない。畑の堆肥として活用する予定だ。水道は雨水を貯めるタンクを設置し太陽光で動かしている。

全てにおいてサイクルさせている。これは西村さんならではのこだわり。

水の動力は人間が作らなきゃいけないので、太陽光を使ってポンプで水を汲み上げ小川を作り、水が溜まるとボウフラ、ミジンコがという生物が生まれ、それを食べる捕食者であるメダカ、カエルと言う自然体系ができる。

人間のテクノロジーと自然との共存を作り実際に肌で感じて欲しいと言いう。

鶏を飼い、鶏は雑草を獲る動きや鶏の糞が堆肥になり、野菜作りには必要な働きをしてくれる。

人の手を加えることで出来上がる自然もあるし、元々の自然もある。破壊をせず人と自然の共存を作ることは出来るのである。

西村さんはパーマカルチャーを目指しているという。永久的な農業という意味。

里山は何も手を加えなければ雑木林なだけ。人の手を加えると、山に水を蓄える事が出来る環境を作り、山をキープルする事ができる。

そして、人も山から自然から、恩恵を受けて食べていける。

人と自然が暮らす中で農業をする事、人が手を加えた事で破壊せずに自然を存続できる、UP CYCLE=循環に繋がってくる。

これが次なるテーマ。

これはどうかこの地球(ほし)に住む一人一人に、真剣に考えて欲しい問題。

西村さんのラボに行けばその活動の話や、地球に対しての想いは伝わってくる。

そして、古材を手に取って欧米文化の様に日本人も物を大切にし、DIYをする週末はどうだろうか?

子供達と一緒に海に行って流木や漂流物を拾い、何かを作る事も良い週末の過ごし方になる。

その時はわからなくても、意味ある事だと後々子供達にも伝わってくるはずだ。

週末の過ごし方はまだまだ無限にある。

PEACE CRAFT 代表/デザイナー 西村正行

山口県出身・三浦郡葉山町在住

 流木•古材•廃材などの古い木材を使った家具・雑貨の制作、個人宅・店舗デザイン施工を手がける

10代からの大工の経験と住宅・店舗のデザインの経験を生かし、小物や家具のデザイン・製作・リメイク、インテリアデザイン、コーディネートなどPEACE CRAFT作品のデザイン全般を担う

"古くなり壊れたら捨て、新しいものを買う"

という世の中の普通に違和感を感じ、2013年31歳の時それまでの経験を生かし、PEACE CRAFT設立を決意

古い素材を使った雑貨・家具の製作、住宅リノベーションや店舗内装などこれまで数多くの作品を生み出してきた。

オフの日は自然と共にすることが多く、素潜り、トレッキング、畑仕事。

自然を愛する者だからこそ、廃材を大切にする心を持ちながら生きている。