心地よい生き方
ファッションモデル/大石学
モデルと冒険家の表情
誰もが素敵だなと憧れるライフスタイルを歩んでいる人は、
カッコつけている訳でもなく、着飾っている訳でもなく、本心で生きている。
だからこそ、生き生きと輝いて見える。
今回インタビューさせて頂いたファッションモデル大石学さんには、その内から放つ本当の心が見えた。
仕事の時は背筋が伸びて凛々しい表情を見せるモデル姿、旅の話を語る時は無邪気な冒険心に包まれた子供のような表情を見せてくれる。
大石さんは20歳の頃に大阪から上京し24年のモデルキャリアを持つ。
ここ数年、休日の過ごし方は山登りが多く1ヶ月に4回程山へ向かう事もあるそうだ。
37歳の頃にはモデル業を1年3ヶ月休業し、世界1周の旅にもでるほどの冒険家だ。
世界最高峰の空気
山登りに魅了したのは2016年に歩いたアンナプルナトレッキング。
世界最高峰の山エベレスト(標高8,848m)が聳え立つネパールは、やはり心に響く景色と達成感があるのだろう。
ネパール最初のトレッキングはエベレスト街道。エベレスト街道とは「ルクラ」という街からエベレストの麓やエベレストが近くに見える場所までをトレッキングするコース。標高5,500mカラパタール山頂はルクラから往復80km、約2週間の長距離トレッキングだ。その先にベースキャンプ(標高5,364m)があり、世界最高峰エベレストはその奥に聳え立つ。世界最高峰の山を見るのは簡単ではないことがわかる。
大石さんのトレッキングはナムチュという標高3,440m付近。
エベレストがこの先にある、同じ空気、同じ世界に立っていた。
その後もネパールには2回ほど訪れ、アンナプルナトレッキング、ランタントレッキングを経験。
アンナプルナはネパール・ヒマラヤの中央に東西約50kmに渡って連なるヒマラヤ山脈に属する山群。
サンスクリット語で「豊穣の女神」と言う。第1峰は標高世界第10位の標高5,400mを誇る鋭く切り立った高峰が360℃囲む。
ランタントレッキングはネパール中部でチベットとの国境付近に位置する。
イギリスの登山家ティルマンによって「世界で最も美しい谷」と言われ、高山植物やリルン氷河を見ることができ別名「花の谷」とも呼ばれトレッカーで賑わいを見せる。しかし2015年のネパール地震で多くの死者を出し、未だに行方不明の被害者もいる。その多くがトレッキング中のランタン谷であった。
村は雪崩と地滑りで跡形もなく、ホテルや民家は氷河と岩の下敷きになったと言われている。
美しい自然界は時に、予期せぬ事も起こる。いつか無くなるかもしれない景色。
インドラダック:強⾵に凪くルンタ/インドラダック:ツーリング中に出会ったノマド/インドラダック:パンゴン湖にて1,600kmのツーリング/ネパール:ランタントレッキング
そんな海外トレッキングを重ねている大石さんの初の登山は、やはり日本の富士山だった。
次第に海外の山にも魅せられるようになりネパールのツェルゴリ(4984m)登頂、インドのカルドゥンラ(5600m)にはバイクで通過する山越えバイクの旅を経験、海外へ旅をしに行く楽しみはトレッキングを目的としていく事が多い。
カラドゥンラはインドのラダック連邦直轄地にある峠。峠は1976年に開通し、1988年には自動車での通過が可能となり、自動車が通過可能な世界1標高の高い峠なのだ。大石さんは9日間約1,600kmのバイクの旅をした。車が通れる最高位5,620m、5,391m、5,359mの3つの峠越えだ。
旅は何が起きるか分からない、知らない土地にたったひとりで過ごす毎日。常に緊張感がある事にも疲れる。
それでもまた、訪れたいと思う気持ち。長い道のりを歩く先には、とてつもなく壮大な美しい景色と、想像もできない旅が待ちわびている。
これが旅の醍醐味となるから、冒険家は辞められないのだ。
世界を旅した大石さんが1番心に残った旅はネパールとインドのラダック。
私たちが住む地球上の裏側ではどんな生活をしているのか?どんな時間が流れているのか?
訪れた者にしか理解のできない時間が流れている。
発展途上国から得る何に対しても言える『美しさ』に勝るものはないのでしょう。
ネパール:アンナプルナトレッキング/⾕川岳/⾕川岳
フィルター越しの世界
大石さんが旅に必ず連れていくバディはカメラ。
普段仕事の時はカメラを向けられている側の大石さんだが、
カメラに興味を持ったのは父から受け継いだフィルムカメラがきっかけとなる。
高校時代、野球名門校で甲子園を目指していた大石さんにシャッターを切る父。
そのカメラを譲り受け、フィルムが映し出す世界へと魅了されたのだ。
山へ行く時には、多いときは4〜5台のカメラを持っていく。1台でも重みのあるフィルムカメラなのにいくつも持って登るというのだ。
山の景色だけでなく、その土地に住む人々を撮っては次訪れた時に写真を渡すように、いつも旅の続きをしているのだという。
過酷な山登りの魅了するものは、達成感、人の良さ、人との出会いだと言う。
大石さんの魅力は旅に出て、大自然とその土地の人に触れ合う事で、自然と大石さんの人間性が表面に現れ
モデルをしている時の表情にも繋がるのだろう。モデルという職業はアーティストだと思っている。
紙面の場合、言葉もなく表情や仕草だけで表現する。表情は人の人間性というものが真っ直ぐに伝わる。
その表情を隠さずに表現する職業がモデル。
長年のキャリアだけでなく、人生の経験がしっかりと表情に映る。
そして大石さんのフィルターにも映る。
「俺のネックレス」:お気に入りのカメラをぶら下げて/ミャンマー:14時間のローカル鉄道移動/ミャンマー:大切な燃料を運ぶ女性たち/エジプト:南部アスワンから小舟で渡った小島
ミンダのチン族/ミャンマー:トレッキングで宿泊した僧院/インドダラック:ヒマラヤの遊牧民…テントの中で温かいお茶をご馳走になる/ミャンマー:唐辛子畑で遊ぶ子供たち
生活のon / off
休みの日に天気をチエックし、晴れていればカメラを持って山へ向かう。
大石さんが今目標にしているのは、アパラチアントレイルだ。
アメリカ東部にあるアパラチアン山脈に沿って南北に縦貫する長距離自然歩道。
ジョージア州からメイン州にかけての14州にまたがる約3,500kmの距離を半年かけてトレイルするという、冒険心がなければ挑むことのできないコースだ。
この話を聞いているだけでワクワクする。
そう!ワクワクする心が週末の過ごし方にも必要だと感じた。
もちろんリラックスする事も大切な過ごし方のひとつではあるが、毎日生活する中でのonとoffは必要。
都会での空気、都会を離れた空気。
その違いを感じる事でonとoffになり、そこで得るものは自然と多いはず。
武尊山登山:モノクロフィルムで撮影(プラウベルマキナ670)
大石学 / ファッションモデル
1975年大阪生まれ
高校時代は甲子園を目指し岡山県へ野球留学
20歳の時に大阪でモデルデビュー
その頃から祖父や父から譲り受けたカメラでセルフポートレートなどを撮り始める
22歳の時に東京へ拠点を移し、更にシンガポールや香港でも活動の場を広げる
バイクで日本各地を旅したのち、37歳の時に世界一周の旅に出発
1年3か月48か国の旅を終えた後も、カメラ片手に日本の山や、アジアを中心に世界各国旅に出る日々
現在も雑誌や広告などを中心にモデル活動中
趣味は『旅と山とカメラとお酒』
是非、HPより旅の写真をお楽しみください!
写真提供:大石学
こちらの記事は新型コロナウイルス緊急事態宣言発令前に取材したものになります。
世界が終息し平和になりましたら、休日の過ごし方についてお楽しみ下さい。